Story 物語

南幌町・Mさん宅
夫婦40代・30代、子ども1人

みずみずしい緑がどこまでも広がる田園のまち、南幌町。そこは、Mさん夫妻が探し続けていた永住の地でした。

横浜に住んでいたMさん一家は「緑の多い土地に生活拠点を構えたい」と願い続け、3年前の札幌支社異動を機に新築を検討。インターネットで依頼先を探し、ご夫妻の目に留まったのが道産材を生かした家づくりに取り組む武部建設のホームページでした。

造作のカーポート、物置、玄関アプローチが一体となったMさんの家。季節や天候を問わず、快適に家の出入りができる

タイミングよく、南幌のみどり野きた住まいるヴィレッジの第1期モデルハウスのオープンイベントが開催されることを知り、ご夫妻も参加。ヴィレッジでは、武部建設が建築家、櫻井百子さんと一緒に完成させた「てまひま暮らしの家」が公開されていました。

「道産カラマツを生かした家と広々とした庭。漠然と思い描いていたマイホームの理想形が目の前に現れ、ここで暮らしたいと思いました」と、奥さんは振り返って語ります。

玄関ドアは、Mさん宅のテーマカラーであるブルーで塗装。開口からこぼれる白熱灯の温かな光が訪れるゲスト、帰宅する家族を優しく迎える

玄関に隣接して、裏動線を設けた玄関収納がある。造作引き戸で間仕切りも可能

左:玄関横には独立した手洗い場を造作。名古屋モザイクの六角タイルを採用し、モダンな雰囲気に仕上げた
右:玄関土間を挟んで、居住スペースと分離した離れのようなゲストルームを設えた。Mさんの書斎も兼ね、テレワークにも重宝している

幸せな出会いから約1年後、ご夫妻はヴィレッジの第2期プロジェクトに参加、武部建設と櫻井さんをパートナーに新居のプランづくりを開始しました。「いつかは夫婦2人暮らしになるので、建物は小さくて十分。その分、建材には道産材をたくさん使い、薪ストーブを暮らしの楽しみの一つとして採用したいと思いました」とMさんは語ります。

吹き抜けのあるストーブ土間からデッキ、庭に続く動線で外部空間と自然につながるリビングは、ご夫妻のお気に入り。デッキにアクセスする掃き出し窓には、北欧テイストの木製サッシを採用した

リビングとダイニングは、エンジュの古材とカラマツ三層合板でルーバー間仕切りを設け、ゆるやかに分離。高さを抑えて落ち着きを演出したLDの天井には、北欧の古い家によくみられる羽目板を張った

また、ご夫妻でコツコツ集めてきた北欧のビンテージ家具が似合う無駄のない間取りも希望。櫻井さんはそうした要望をくみ取りながら、北欧の古い住宅をお手本に羽目板やタイル、木製サッシを空間のアクセントに用いたプランを提案しました。

新緑が萌える2020年5月、カラマツ無垢材を用いた、延床30坪の新居が完成しました。古い家具、新築のために用意した照明、何もかもが木の温もりあふれる空間にしっくりと馴染んで落ち着いた雰囲気。

お気に入りのハンス・J・ウェグナーのソファを置いたリビングは、念願の薪ストーブを設置した土間に続き、デッキや庭へもそのまま出ることができます。

壁付けにしたキッチンには、外光を採りこむ開口が設けられている。「人目が気になるからと櫻井さんが高さを調整してくれました。空だけが見えるので、気持ちよく家事ができます」(奥さん)

水回りや洗濯室のある2階へ延びる階段横にキッチンが設けられ、家事効率が良い。背面には造作棚を設えたほか、階段横には食品庫も完備

左:2階のゆったりとした階段ホールは、フリースペースとして活用。カラマツ無垢材の構造現しの天井に、武部建設ならではの手仕事が光る
右:2階には家族共用の大型クロークもある。家族の衣類を一括して収納でき、衣類の管理もしやすくなったという

リビングの吹き抜けに面して開口を設けた子ども室。小学1年生の息子さんは「自分の部屋ができた」と大喜びで、1人で寝るようになった

「室内と外につながりのある住まいにしたいという要望もかないました。また、空の移ろいと庭の緑が暮らしの中で楽しめる窓があちこちにあることで、豊かな広がりが感じられる住まいになったと思います」。

そう語る奥さんのこれからの楽しみは、ゆったりとした敷地を生かした「てまひまな庭づくり」。「休日になると庭の手入れをしながら、楽しそうに語らうご近所さんをよく見かけます。私たちもこれから庭や菜園を充実させて、その仲間入りをしたいと思っています」と、Mさんも弾んだ声で話してくれました。

夕闇が迫るころには、大小の開口から温かな灯りがにじむMさん宅

Replan北海道vol.129掲載